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就業規則の必要性

 

こんにちは!長崎県佐世保市の採用特化社労士事務所、楠本人事労務研究所です。

 

就業規則は法律で作成義務があると聞いたけど、うちの会社は今まで問題無く運営できているし、本当に必要なの…?

従業員が増えてきたけど、具体的にどんなメリットがあるのかピンとこない…。

就業規則を取り入れるとどんなリスクが回避できるのか、会社にとってどのようにプラスになるのかわからないから作成に踏み切れない…

 

このような悩みを抱えている事業主の方、実は非常に多いんです!

 

実は、従業規則は単なる法律の遵守に留まらず、会社の運営を安定させ、従業員との関係を良好に保つための非常に強力なツールです。

トラブルを未然に防ぐだけではなく、従業員の安心感を高め、企業に根ざす文化を形成および明文化する上でも重要な役割を果たします。

特に、従業員が10人以上になった場合には、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が法的に義務付けられているため、企業の成長に合わせた就業規則の整備は避けては通れない課題になっています。

 

それでは、具体的に就業規則がどのように会社にとって役に立つのか、会社側からみた必要性と従業員側から見た必要性について考え、またその作成にあたってどのようなポイントがあるのか、事例を交えながら詳しく見ていきましょう!

 

【会社側から見た必要性】

会社の必要性

会社側から見た就業規則の必要性を理解するためには、実際の事例を参考にすることが非常に有効になります。

一例として、過去の判例を見てみましょう。

 

事件番号:平成13()1709 フジ興産懲戒解雇事件

この事件では、フジ興産株式会社の従業員が懲戒解雇されて、その解雇が適法なものかどうか、適法性が争われたものです。

フジ興産は、旧式の就業規則と新式の就業規則の両方を持っていました。

しかし、懲戒解雇の際に新式の就業規則の内容が従業員に周知されていなかったため、懲戒解雇の適法性が問題となりました。

この裁判において、最終的に裁判所は、就業規則の周知が不十分であったことを理由として、懲戒解雇の効力を認めなかったのです。

この事例から、就業規則が従業員に修理されていることの重要性が明らかになりました。

 

つまり、就業規則を作成するだけでなく、しっかり従業員に対して周知することが重要ということですね。

いかにも高級そうな金庫に大事に大事に保管していてもダメですし、社長の自宅のみに保管されている、ということも周知としては認められません。

会社に設置したうえで、設置場所を全従業員に掲示板等でお知らせする、就業規則自体を全従業員に配布する等して【従業員が見ようと思えばいつでも見ることができる】状態を作るということが【周知する】ということなのです。

 

【法的な背景】


日本の労働基準法第89条によると、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に就業規則を届け出る義務があります。

この就業規則には、以下の事項が含まれていなければなりません。

(これを、絶対的必要記載事項といいます)

1.始業および就業の時刻、休憩時間、休日、休暇に関する事項

2.交代制がある場合には、就業時転換に関する事項

3.賃金の決定、計算の時期並びに昇給に関する事項

4.退職に関する事項(解雇の事由を含む)

 

また、その事業場において定めをする場合に記載しなければならない事項があります。

(これを、相対的必要記載事項といいます)

1.退職手当に関する事項

2.臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項

3.食費、作業用品などの負担に関する事項

4.安全、衛生に関する事項

5.職業訓練に関する事項

6.災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

7.表彰、制裁に関する事項

8.その他全労働者に適用される事項

 

このほかに、事業場内で慣例として行われている行事や規則等があれば併せて記載しておくことも有効でしょう。

これらの事項を明確にすることで、会社は労務管理の一貫性および透明性を確保して、従業員とのトラブルを未然に防ぐことが可能になります!


【経済的なメリット】


就業規則が正しく整備されていることにより、会社側はいくつもの経済的なメリットを受けることができます。

ここでは、いくつかご紹介させていただきます!

 

1.法的なリスクの軽減

明確な懲戒規定があり、それに則って従業員の取扱いを定めることで不当解雇のリスクが減少し、裁判や賠償のコストを避けることができます。

しかし、せっかく作成した就業規則も正しく運用されていなければ何の意味もありません。

「就業規則では譴責とする、と記載されているけどそれでは俺の気分は収まらない!」といって懲戒解雇に処する等、事業主の感情一つで処遇を過剰に重いものとしてしまうようなことがあるとそれは就業規則があっても無くても同じことになってしまいます。

 

従業員の何月何日のどのような言動、行動が就業規則第〇条〇項に抵触するのか、それは初回の出来事によること等から処遇を本来より軽微なものとして取扱うのか、また同様の違反を複数回行ったことによる加重判定とするのか、加重判定を行う場合は過去の行いも含めて全て書面上で残っているのかも考慮されるため、従業員に対して何らかの処遇を行った場合は必ず口頭のみだけでなく書面に残すようにしましょう。

 

就業規則をしっかり整備する、従業員対応を規則に則って行い、書面に残すといった行為はいわば、本来は大火事になるはずだった出来事を小火で収めるためのものでもあります。

就業規則があるとはいえ、会社が様々な考え方や物の見方を持った人の集合体である「組織」である以上、「人」に関するリスクをゼロにすることはできません。

しかし、会社側の正当性も主張できず、不当解雇等を行ったことで裁判や賠償のコストが膨らみ、かつ会社としての信用も失ってしまうような大火事に巻き込まれるよりは、就業規則を整備して正しく運用し、会社の正当性を表明して事態を小火程度に収める方が会社側の経済的なリスクは大きく軽減できるのではないでしょうか。

 

2.助成金の受給チャンスが広がる

就業規則を整備することで、雇用関係助成金を受給する条件を満たしやすくなります。

例えばどのような助成金が受給できるチャンスがあるのか、ご紹介いたします。

 

2-1.キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金はいくつかコースの種類がありますが、ここでは正社員化コースに限ってご紹介いたします。

キャリアアップ助成金(正社員化コース)は、会社が契約社員等の非正規雇用従業員を正社員として登用した場合に、その会社に対して国から助成がある制度です。

キャリアアップ助成金の詳細な説明はまた別の記事でご紹介させていただきますね。

この助成金制度を活用するにあたって、「就業規則と助成金の何が関係あるんだ」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、実は関係大アリなんです!

 

キャリアアップ助成金の申請をするにあたって、会社の給与制度(勤怠の締日や支払日はもちろん、月給制や日給制といった計算方法の確認、各種手当の項目や支給基準、金額が明記されているか)の確認、昇給に関する事項が明記されているか、賞与や退職金に関する事項が明記されているか、そして最も重要な、正社員登用に関する事項が明記されているかどうかの確認がされます。

 

つまり、就業規則にそもそも正社員登用に関するルールが明示されていない、事業主もよく分かっていない手当が乱立して慣例として支給している(就業規則には不記載)といった、就業規則の内容と実態としての運用がリンクしていない場合はこれも不支給となるリスクがあります。

 

2-2.業務改善助成金

業務改善助成金は会社の働く環境や作業方法を改善するために使うお金を、国が助成してくれる制度です。

例えば、会社が新しい機械を導入して仕事の効率をアップさせたり、働きやすいように職場をリフォームした場合、そのための費用の一部を国が負担してくれるものです。これにより、会社はコストを抑えつつ、従業員の給料を引き上げたり、より良い労働環境を作ることが出来ます。

 

この助成金を活用するにあたっても、「就業規則と助成金の何が関係あるんだ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。

 

これも、実は関係大アリなんです!

 

業務改善助成金の申請要件の1つに「賃金額の引上げ」がありますが、ここに落とし穴があるんです。

ただの「賃金額の引上げ」ではなく、「事業場内最低賃金の引上げ」が必要になります。

何が違うのか?と思いますよね。

例えば、とある会社に時給1,050円のパートさんと時給950円の2名のパートさんが居たとします。

この場合、業務改善助成金の要件を満たそうとすると事業場内最低賃金である950円のパートさんの賃金を必ず引き上げる必要があります。

その際に、何円に引き上げるのかによって業務改善助成金の申請コースが変動しますが、引上げ後の事業場内最低賃金額を就業規則に明示して報告の際に提出しなければなりません。

 

つまり、就業規則がそもそも作成されていない、職場内最低賃金に関する規定が定められていない場合、本規程の施行日が明確でない場合はそれを以て業務改善助成金の申請が否認されてしまう可能性があります。


今回ご紹介した助成金をはじめ、そのほか多くの助成金が、要件とする項目を就業規則等で正しく規定できているかどうか確認されます、もし自社の規定が助成金申請にあたって要件を満たしているか不安になったら、お気軽にお問い合わせください!

 

【管理の効率化】


就業規則があることで、会社の運営が大きく効率化される部分があります。

その中でも、今回は給料の計算についてお話します。

 

自社の給与の計算をどのようにされているでしょうか?

Excelに計算式を入れてそのまま計算していますか?給与計算ソフトに従業員の勤怠情報を入れて出力された結果を何となく給与明細に反映させていますか?

 

この時、残業代等の計算は正しく行えているでしょうか?

残業代をはじめとした割増賃金を支払う際、計算の基から除外される手当は以下の通りです。

① 家族手当

② 通勤手当

③ 別居手当

④ 子女教育手当

⑤ 住宅手当

⑥ 臨時に支払われた賃金

⑦ 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金

 

これらの手当も全て含めて残業代を計算していませんか?

それとは逆に、手当を全て含まず基本給のみで残業代等を計算していませんか?

自社の従業員から「残業代ってどうやって計算しているんですか?」と質問された際に根拠を持って答えることは出来るでしょうか?

 

就業規則に割増賃金の計算の基礎として用いる諸手当の項目を明文化することでこれらの問題は「半分」解決することができます!

もちろん、手当の名称としてよく用いられる「役職手当」、「業務手当」のほか、会社独自の手当等もあるでしょう。

それらも含め、原則として就業規則に手当の名称と詳細を明文化したうえで割増賃金の計算の基礎に入れなければなりません。

そうすることで、自社の従業員から疑問を投げかけられた際に根拠を持って回答することが可能となり、それは会社という組織全体の信用にも繋がるのです。

 

それでは、「もう半分」を解決するためには?

そのためには、就業規則にもう1つ明文化しなければならない部分があります!

 

例えば、日給12,000円の従業員は1時間あたりの賃金はいくらになるでしょうか?

これは簡単ですね、1,500円です。時給1,500円の従業員も勿論同じですね。

では、月給200,000円の従業員や、日給制でも月に手当を10,000円受けている従業員は1時間あたりの賃金額はいくらになるでしょうか?

 

これも、就業規則を定めていないと非常に混乱の基になりやすい部分です。

2月は基本的に28日しかありませんし、12月や1月は年末年始休暇、5月はゴールデンウィーク等、月によって働く日数が大きく違うのですから、その月の所定労働時間によって残業代単価を変えるということもできますが、計算が煩雑になるため、あまり現実的ではないでしょう。

 

扱いを一律にする方法としては、会社の休日から鑑みた月の平均所定労働時間数を算出して、月給額や手当額をその時間数で除することで1時間あたりの賃金額を出すことができます。

こうした手法を独自でやっていらっしゃる会社さんも多いでしょうが、従業員から質問された際にこれをパッと回答できる方はどれくらい居るでしょうか?

会社として当たり前の考え方だとしても、新しく入った従業員でもすぐわかるように、そして既存の従業員が改めて確認するために、そして何より不理解から生まれる不要なトラブルを回避するために会社の平均所定労働時間数といった部分までしっかり明記する必要があるでしょう。

 

【まとめ】


今回は会社側から見た就業規則の必要性についてお話させていただきました。

従業員への対応を一律にする、不要なトラブルを避けるために大きく貢献するツールであることは間違いないですが、気を付けておかなければならないことは、就業規則を制定することで従業員は勿論、会社も同様に就業規則を遵守する必要がある点、そして規則の不利益変更にあたっては全従業員の承認を得る必要がある点等、会社の好き勝手に色々決めて色々変えて…といった動きが制限されることとなります。

 

しかし、会社の規則が明確である会社とそうでない会社、従業員の立場から考えると当然に規則がある会社の方が安心して働けるのではないでしょうか?

全国の企業11社が今より少しでも「良い会社」となれるようこれからも有益な情報を発信させていただきます。

 

次回は、従業員の視点で見た就業規則の必要性や作成にあたって、どのようなプロセスを踏むのか、お話いたします!お楽しみに!


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