就業規則の効力がいつからか、社会保険労務士からの目線で解説するブログのアイキャッチ

就業規則の効力はいつから?届出時から?施行日から?徹底解説!

 

こんにちは!長崎県佐世保市の採用特化社労士事務所、楠本人事労務研究所です。

 

皆さんの会社には就業規則は備え付けてありますか?

「ウチの会社は従業員が10人も居ないから作っていない」という社長さんや、そもそも「就業規則って何だ」って社長さんもいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そこで、今回は就業規則がそもそも何か、というところから就業規則を作成した後の効力はいつから有効なのかについて解説しますので、是非最後までご覧ください!

 

【就業規則って何?】

 

就業規則とは、労働基準法や労働安全衛生法、労働契約法、労働関係調整法等(その他関係法令含め、「労働法」といいます)に基づいて、会社の労働条件や服務規律といったルール事について、その会社毎に定める規則を指します。

 

職場でのルールを定め、労働者と会社側の双方が守ることで労働者が安心して働くことができ、労働者と会社間の無用なトラブルを防ぐことができるため、就業規則の役割は非常に重要なものです。

 

【就業規則に関する法令】

 

就業規則では労働法を守り、従業員に対して一方的に不利な労働条件を締結させ運用することを防ぐために、その規則を明確にしなければなりません。

 

常時10人以上の従業員を雇用する企業の場合、就業規則の作成および届出が義務となっております。

そして、就業規則の作成と“周知”は、「自社は労働基準法を守っていますよ」と従業員にアピールすると同時に、他社や求職者、従業員から見た会社の信頼性においても重要なものです。

 

ここでいう“常時10人以上”とは正社員のみで10人以上ということではなく、雇用形態に関係なく10人以上雇用している労働者が常態として10人以上居る場合は要件を満たすこととなります。

 

【就業規則の効力発生はいつから?】

 

10人以上の従業員を雇用する会社は就業規則の作成、届出が義務だということは先程お話させていただきました。

 

そこで、就業規則の効力はいつ発生するのか?

「届出をした時点から効力が発生するのか」、「作成した時点から効力が発生するのか」等、そもそもどの時点から効力が発生するのか疑問を持つ人も多いでしょう。

 

ここからは就業規則の効力発生について詳しく解説します。

 

【就業規則の効力発生日】

 

就業規則の効力を発生するためには最重要要件として、「従業員に周知する」ことが必要になります。

つまり就業規則は前述の届出をした時点から効力が発生する、作成した時点から効力が発生するというわけではなく、「従業員に周知」した時点から効力が発生します。

これは逆に言えば「周知されていなければ就業規則の効力は発生しない」ということです。


【周知するってどういうこと?】


就業規則の効力発生はいつから、という部分については従業員に周知した時点からになりますが、具体的に周知する、とはどのようなことを指すのでしょうか。

 

就業規則は法令上、「確認できる場所に掲示」、「書面で交付」、「データで共有」のいずれかの方法で周知されなければなりません。

 

「確認できる場所に掲示」は、社内の見やすい場所に常時掲示する、いつでも従業員が見られるように冊子にして備え付けておく等の方法が挙げられます。

一方、全ての事業所で紙媒体で保管しておく場合、事業所が複数あると変更内容の食い違いが起きやすかったり、改定版の管理が煩雑になるといった側面もあります。

 

「書面で交付」は、従業員11人に就業規則を配布する方法が挙げられます。

確実に周知することができる反面、確認できる場所に掲示することと同様に改定版の管理が煩雑になる、印刷代や紙代のコストが問題になります。

 

「データで共有」は、法令上は「磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置する」と定められています。

しかし、実際は社内のサーバーやグループで電子的に情報を共有する方法が現実的でしょう。

この方法であればデータの一元管理ができるため、改定版の管理等が容易となります。

こういったことから、現在はこれらの方法で管理することが一般的になりつつあります。

 

【就業規則の周知義務違反】

 

就業規則の周知義務を怠った場合、就業規則の効力が発生しないだけでなく、労働基準監督署の指導、勧告を受ける場合があります。

悪質性が認められた場合、労働基準法違反で30万円以下の罰金が科されることも。

 

【就業規則の法令違反と効力との関係性】

 

就業規則には時に、労働条件が労働基準法等に違反している場合があります。

その場合、法令に違反している部分があることを理由として就業規則全体の効力が無効になるのでしょうか。

 

実際は「法令違反の部分の規則は無効になり、法令に則したものとなる」ため、その他の部分については周知されていれば就業規則の効力は発生するとされています。

 

これは法令違反のみならず、その他の労働条件等に関する法的効力を有するものでも同様です。

労働条件等に関する法的効力を有するものは「労働協約」や「労働契約」が挙げられますが、優先順位は「法令→労働協約→就業規則→労働契約」になります。

優先順位が上の基準に反する場合(例:労働契約が就業規則の定める基準より低い場合)は無効になるとされており、前述のように無効になった部分は就業規則で定める基準が適用されるようになります。

 

【就業規則の効力が認められるために】

 

これまで就業規則の効力について解説しましたが、就業規則にどのような規定を設けても効力が認められるわけではないことはお分かりいただけたかと思います。それだけではなく、労働契約法上では就業規則に定められた労働条件が合理的なものかつ法令に反していないことが必要です。

 

【退職制限に関する就業規則の効力】

 

従業員の自己都合退職にあたって、退職願や退職届を提出してもらう会社は多いでしょう。

そこで、従業員の自己都合退職は3か月前までに退職届を提出することによって…といった規定を定めるとどうでしょう。

規定はあるものの、従業員は民法で定められている2週間前に会社に通知することによって会社の承諾如何にかかわらず退職が可能になります。

(民法では、当事者が雇用期間を定めなかったときは、各当事者はいつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から2週間を経過することによって終了する。と規定されています)

 

【退職後の義務に関する規定の効力】

 

退職後、会社のノウハウを多大に抱えた元従業員に対して期間を設けて競業避止義務を課すこともあるのではないでしょうか。

これは従業員の退職後の職業選択の自由を大きく制限するものであり、実際の裁判例においても「再就職を妨げその生計の手段を制限してその生活を困難にするおそれがあるとともに、職業選択の自由に制約を課すものである」とされています。

 

【副業の制限に関する規定の効力】

 

会社によっては、業務専念の観点から副業を制限または禁止したいこともあるでしょう。

しかし、就業規則に定められた労働条件が合理的かつ法令に反しないことが必要という観点から、例として副業を全面禁止する規定を就業規則に設けたとして、基本的には効力は認められないでしょう。

 

過去の判例では、勤務時間以外の時間は事業場の外で自由に利用でき、兼業のためにその時間を利用することを原則許さなければならないとされています。

 

例外として兼業禁止が許されるのは、兼業することで労務の提供が不能または不完全になる事態が生じる、企業秘密が漏洩するといった経営秩序を乱す事態が生じるような場合に限られるとしています。

 

【従業員10人未満の会社の就業規則の効力】

 

従業員が10人未満の会社では就業規則の作成や届出は義務付けられていませんが、10人以上の会社と同様に就業規則を作成し、従業員に周知されていれば就業規則の効力は発生します。

勿論、事業所所轄の労働基準監督署に届出た場合は10人以上の会社と同様に受理されます。

 

【退職後の従業員への就業規則の効力】

 

在職中の従業員には、当然に就業規則は適用されますが、退職した従業員には基本的に就業規則の規定は適用されません。

退職した従業員は会社に雇用されていないため労働基準法上の労働者にはあたらないためです。

(例外として、前述の競業避止義務や秘密保持義務は一定の要件を満たせば退職した従業員も適用される場合があります)

 

【就業規則の変更】

 

就業規則は会社の新しい労働条件の施行や法改正といった新しい法令の遵守、その他規定の定期見直しによって就業規則を変更する場合、就業規則の作成時と同様に適切な変更の手続を行わなければなりません。

 

【就業規則の不利益変更】

 

就業規則を従業員にとって不利益な条件に変更する場合、通常の変更とは異なり、原則、効力が認められず無効になります。

ただし、一方的な条件引下げは認められないものの「合理的な理由」があるとして就業規則の不利益変更が認められる場合はやむを得ないものとして認められます。

その場合、従業員の同意を得たうえで周知することで効力が認められ、従業員はその就業規則に拘束されると考えられます。

 

【就業規則の不利益変更の合理性判断基準】

 

前述した「合理的理由」の判断基準は個別具体的に判断されるものです。

これまでの判例では、労働組合または従業員の大部分の合意があるか、変更の必要性、従業員が被る不利益の程度、代償措置や経過措置はあるか等に照らして判断されます。

 

また、変更に合理性がある場合に限って効力を認めるものや、賃金や退職金といったお金に関するような従業員にとって重要な労働条件の不利益変更は、「高度の必要性に基づく合理性」がある場合に限って効力を認めるとされています。

 

つまり、従業員の合意が無い限り、使用者側から就業規則の内容を一方的に変更することには法的拘束力が無いことに留意しましょう。

 

【不利益変更の合理性が争われるケース例】


ここでは、就業規則の不利益変更の合理性について、裁判例を基にしたケースを見ていきましょう。

 

① 労働時間や休憩時間、休日の変更

会社の状況によっては、当初の労働時間や休憩時間、休日について変更を行う場合があります。

そのような場合でも就業規則を作成している場合、定めている事項を変更する必要がありますので、変更の手続を行います。

 

法定以上の条件で休憩時間や休日を定めていたが適法範囲で労働条件の引下げを行う場合、従業員にとっては不利益変更に該当するため、前述のように合理的な理由が必要です。

変更の必要性や不利益の程度、代替措置や以降の猶予等が設けられていたか個別具体的に判断することとなります。

 

② 給与の減額や手当の廃止

就業規則に定める労働条件の中でも特に重要で従業員にとって非常に影響が多いのが賃金に関する部分でしょう。

基本給や手当について、会社が一方的に引き下げるケースが問題になる場合があります。

 

就業規則で従業員の賃金に関するテーブルが定められている場合、会社側がこのテーブルを変更して従業員の給料を下げることは従業員にとって不利益変更にあたります。

そのため、変更する合理的な理由が求められます。

 

「なんとなく減額した」、「減額幅が大きい」、「不利益緩和の代替措置や移行期間が無い」等の場合、効力は認められないと判断される可能性に注意しましょう。

 

【会社の新しい労働条件の施行】

 

働き方の多様化や会社の状況、従業員からの希望等で服務規律や賃金規定の見直し、変形労働時間制やフレックスタイム制度、テレワーク制度といった新制度の導入等においてはその必要性に応じて就業規則を見直して従業員の意見を聞き、周知を行うことで、改定後の就業規則も同様に効力が発生します。

 

【法改正による見直し】

 

労働条件明示の変更や働き方改革の促進、育児介護休業法の変更等、労働法関係の法改正は数年おきに施行されています。

 

定期的に見直しが必要であり、法に則した規則が整備されていない、実態と規則が合わず異なる運用をしてしまっている場合は知らずに法令違反になってしまうことがあります。

 

特に自社の就業規則が更新されていない場合や大きく会社の制度が変更になっている場合は定期的に管理しておくことが大切です。

 

【まとめ】

 

就業規則は専門家に依頼することなく会社側で自作することも可能です。

しかし、作成や周知に関して十分な知識が無いと会社にとって不都合な内容でそのまま作成、周知を行い、就業規則の効力が認められてしまう場合があります。

 

その場合、いざ労働問題に直面した際に自社の就業規則の脆弱性や正しく運用できていなかったことが原因で会社側に大きな損害が発生してしまうこともあります。

 

弊所では労働問題を交通事故のように表現することがあります。

専門的な知識を持たずテンプレートをそのまま使用したような、いわばキックボードやスケートボードのような安全への脆弱性で対向車と正面衝突する交通事故が起きたらどうなるでしょうか。

怖くて考えたくもないですよね。

 

弊所では会社がそのような被害に遭うことを避けるべく、就業規則の作成から周知まで徹底してサポートさせていただいております。

中小企業の就業規則をしっかり整備して会社の現在から未来まで守り通したい、土台固めをしておきたい方はお気軽に長崎県佐世保市の社労士事務所、楠本人事労務研究所にお問合せください!


楠本人事労務研究所 代表社会保険労務士 楠本一紀

社会保険労務士

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