就業規則を無料テンプレートのまま使用する危険性を解説する記事のアイキャッチ

注意!無料の就業規則テンプレートをそのまま使用していませんか?危険性を専門家が解説!

                                                          

こんにちは!長崎県佐世保市の採用特化社労士事務所、楠本人事労務研究所です。

 

皆さんの会社に備え付けてある就業規則はどのように作られているか、または作っているか、覚えていますか?

 

就業規則を作成する際、専門家に依頼することなく自社で作成しようとした場合のほとんどのケースで就業規則のテンプレートがそのまま、またはわずかに改変した形で届出が行われています。

 

「どこかの社会保険労務士事務所が作った専門的なものだから」と良かれと思って使用したテンプレート、実は大きな落とし穴を見逃しているかもしれません。

 

今回はその落とし穴と、就業規則の作成の際はどのようにすれば良いのかについて解説しますので、是非最後までご覧ください!

 

【就業規則は会社を守る鎧】

就業規則

就業規則は法令上、10人以上の従業員を雇用する会社は必ず作成して管轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。

この就業規則を、作成と届出が必要に迫られたあくまで「ただの文章の集合体」と認識していませんか?

 

まずはこの認識を大きく改める必要があります。

就業規則は会社・労働者双方の関係を規律するルールブックのようなものであり、労働者と雇用契約を行う際はその労働条件に相当します。

賃金の改定方法や改定時期、賞与の支給時期や手当の詳細、雇用形態ごとの労働時間といった労働条件を就業規則によって統一して設定することにより、雇用契約の度に「この人はどのような条件で…」と考える必要がなくなります。

 

これにより効率的な事業運営を行うことが可能となり、更に服務規律や懲戒に関する規定が明記されている場合、労働者への指揮命令が服務規律を背景として容易なものとなり、違反者への罰則という形で制裁等が可能になります。

1回の遅刻で懲戒解雇や普通解雇といった極端な例は、合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められず解雇権を濫用したものとして無効になる場合があります)

 

このように、就業規則は作成し周知すると会社にとって非常に重要な機能が発生します。

そして、労働者との間で実際に労働条件等に関してのトラブルが発生した場合や服務規律違反といった問題社員への対応が必要になった際に就業規則を作成していなかった場合、会社側は非常に不利な立場に立たされることとなり、対応しようとしてもできないといった雁字搦めの状態に陥ってしまいます。

 

【作り込まれていない就業規則が及ぼす危険性】

 

就業規則は、作りさえしておけばとりあえず大丈夫!というものではありません。

会社のルールブックである就業規則は作成および周知によって労働者に対して職場のルールを守るよう拘束力を生ずるものですが、それは当然に会社側においても同様です。

 

これを考慮せずにどこの誰とも知らない人が作った、いつの時代のものかもわからない就業規則のテンプレートをそのまま流用して「これがウチの就業規則や!」とした場合どうなるでしょうか。

 

自社に全く状況的に当てはまらない、または逆に不利な内容で会社を縛ってしまう就業規則の出来上がりです。

 

例えそのようにしても会社はその就業規則に従う必要があるため、モデル就業規則(厚生労働省が公表しているもの)や【就業規則 テンプレート】等と検索してダウンロードしてきた就業規則をそのまま使用している会社は注意しましょう!

 

モデル就業規則や就業規則のひな形を参考資料、もしくはたたき台として考えるのは良いですが、それを鵜吞みにしてはいけません。会社の状況に合わせて条文単位で改造する必要があります。

モデル就業規則やひな形を【就業規則のテンプレート】と認識してしまうと、致命的な内容や労働者に対して過度に有利な内容が記述されていたとしても記述内容に疑問を持たず、「よく分からないけど専門家が作ったテンプレートだし大丈夫だろう」という安易な考えからそのまま届出をしてしまうケースもありますので、記述内容はよく吟味するようにしましょう。

 

【モデル就業規則、ひな形の問題】

 

何度でもお話しますが、会社のルールを定めるにあたって、厚生労働省が出している「モデル就業規則」やインターネットに放流されている就業規則のテンプレートをダウンロードして就業時間と手当の名前だけ整えて印刷、届出を行って会社の就業規則とした場合、会社で発生する費用は僅かな紙代や印刷のインク代、社長の人件費程度ということになるので非常に安価に済むでしょう。

 

しかし、会社のことを考えるとそれで良いのかは疑問が残ります。

 

インターネットに放流されている就業規則のテンプレート等をそのまま流用した会社から相談を受けることが時折ありますが、実際に就業規則を拝見したうえで会社の状況を聞くと記載されていることと実態が全く異なっているということがほとんどです。

 

その場合は、会社に更に状況をお聞きしたうえで全面改定という形で対応するようにしています。

この場合、社長だけでなく従業員に対しても就業規則の説明という形で修正した内容について各条文ずつ説明する機会を設けています。

 

就業規則は労使間の条件を規定する「契約書」の役割を果たすため、一度作成して周知し効力が発生した就業規則を変更することは容易なことではありません。

特に、従業員を更に縛る要素が増えるような不利益変更の場合はなおさら難しくなります。

 

【業種や企業規模等の問題】

 

厚生労働省のモデル就業規則やインターネットに放流されている就業規則のテンプレートはあくまでただのひな形であり、建設業や製造業、卸売業といった会社の業種や10人から100人規模といった会社の規模は考慮されていません。

 

例えば、建設業では現場での安全衛生管理に関する項目をより充実させる、等の業種に応じた異なる作り込みが必要になりますが、それらのことは一切考慮せず、あくまで一律の内容が記載されています。

 

【モデル就業規則やテンプレートで会社を守れるか】

 

社会保険労務士事務所が作ってインターネットに放流している就業規則のテンプレートはともかく、特にモデル就業規則は労働基準法に準拠して作成されています。

そのため、非常に労働者寄りの規定であり、性善説の考え方に基づいていることが多く、会社の立場に立って作られているとは言えないでしょう。

 

【労務リスクのパターンの変化】

 

近年の労務問題は様々なパターンが存在しています。

モデル就業規則では精神疾患やパワハラ・セクハラへの対策、問題社員への対策等への明確な対応が記載されていないため、実際にそのような場面に遭遇した際に対処ができない規則となってしまいます。

 

【会社側に過度な義務を生じさせる場合がある】

 

実際に厚生労働のモデル就業規則や就業規則のテンプレートによくある規定例を取り上げてみましょう。

 

【目的条文】

第○条 この就業規則は、労働基準法第○条に基づき、○○株式会社の労働者の就業に関する事項を定めるものである。

2.この規則に定める事項のほか、就業に関する事項については、労基法その他の法令の定めによる。

 

このような規程は、モデル就業規則はもちろん、実際に会社で適用されている就業規則にも見られます。(これを包括準用規定といいます)

労働基準法では第13条に、定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は無効とし、法律で定める基準による、とあります。

 

一方で育児介護休業法やパートタイム・有期雇用労働法等は定めに違反する規定は無効になるのみであり、当然に法令通りの基準となるものではありません。

そのため、仮にこれらの内容について規定されていなかった場合は是正の指導等の対象にはなるものの、法令通りの基準で労働条件として定められるものではありません。

勿論これらの規定は法令で定められている以上、就業規則で定めるべきではありますが、あくまで行政規制法でしかない法令の定めについて意図も無く労働条件とするような作成の仕方は避けるようにしましょう。

 

【従業員の適用範囲】

第〇条       この就業規則は、〇〇株式会社で働く労働者に適用する。

2. 契約社員、パートタイム労働者の就業に関する事項は、別に定める「契約社員等就業規則」に定めるところによる。

3.前項について、別に定める規則に定めのない事項は本規則を適用する。

 

このような規定をしている場合はどうでしょう。

一見、自然な規程の流れにも見えませんか?

 

従業員の適用範囲においてこのような規定をした場合、無期転換をした従業員はどのように扱われるでしょうか。

労働契約法第18条に基づく無期転換の申出を行い転換した場合、契約期間が無期になっただけでその他の条件は変わらないにもかかわらず、就業規則の適用範囲を見て「私は正社員用の規則が適用される」と主張される可能性があります。

 

労働契約法第18条には有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件とする、とありますが、「別段の定めがある部分を除く」とも記載されています。

そのため、正社員の適用範囲が曖昧になっていると「うーん、これは別段の定め!」と解釈される可能性があります。

 

これを避けるために従業員の適用範囲はあらかじめ、明確に正社員にのみ適用されるということを明記する必要があります。

しかし、本来正社員には「正規雇用」かつ「期間の定めなし」であることしか含まれていませんので、これでは無期転換した契約社員も正社員に含まれる余地が残ってしまいます。

 

そこで、弊所が推奨しているのは「正社員登用の手続」を行ったうえで採用、または登用した者と限定したうえで、かつ契約社員等を除くこととしています。

 

契約社員等を除く適用除外については、パートやアルバイトはもちろん、有期雇用労働契約社員、無期転換労働契約社員、合意に基づく無期労働契約社員や嘱託社員も除くと明記するようにしましょう。

 

【包括準用規定の効果で強行的効力・直律的効力を有するもの】

 

強行的効力とは、規定に違反する内容を無効とするものであり、直律的効力は、無効になった部分を規定に基づいて補充するものです。

労働基準法13条では「この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。」と定めています。この前段太字にあたる部分が強行的効力後段下線字が直律的効力を有するものになります。

 

【努力義務規定に留まるもの】

 

一方で、これらの強行的効力を有しない、努力義務に留まる規定も法令の中には存在します。

これは、就業規則の記載次第で義務の内容が大きく変わることは前述の通りですね。

 

労働安全衛生法の条文を例に考えてみましょう。

労働安全衛生法とは、労働災害防止措置や安全衛生教育、労働者の健康保持等が定められています。

 

まず、義務規定から考えてみると、以下のような規定があります。

「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。」

これに違反した場合は罰則が定められていることからも義務を負わせるものと解釈できるでしょう。

 

対して、履行を促す趣旨の努力義務規定も存在します。

「事業者は、室内又はこれに準ずる環境における労働者の受動喫煙を防止するため、当該事業者及び事業場の実態に応じ適切な措置を講ずるよう努めるものとする。」

こうした努力義務も就業規則に包括準用規定が定められていると労働契約の内容になり、使用者側が法的な義務を負うことになります。

 

【選択的な措置義務を定めているもの】

 

包括準用規定を定めることによって、法律が使用者側に対して選択的な措置義務を定めている規定が、そのまま労働契約の内容になることがあります。

例えば、高齢者の65歳までの雇用確保の措置を見てみましょう。

「定年の定めをしている事業主は、その雇用する高齢者の65歳までの安定した雇用を確保するため、次の各号に掲げる措置のいずれかを講じなければならない。」

1.定年の引上げ

2.継続雇用制度の導入

3.定年の定めの廃止

 

措置義務について複数の選択肢が設けられている場合は、具体的にどの選択肢が労働契約の内容になるのか1種類に確定しないこともあるでしょう。

 

しかし、これは労働者側から考えてみるとどうでしょうか。

今回の件を例にすると、これらの選択肢全てが労働契約の内容になっている以上、労働者側がその中の1つを任意に選択して請求してくることも考えられます。

労働者A「俺は定年の引上げをしてもらうぞ!」

労働者B「ワシは継続雇用してもらおうかのう」

労働者C「ぼくはそもそも定年なんて望んでいないのじゃ」

 

実際にこれらの請求が認められるかどうかは議論する余地が残ります。

しかし、このようなトラブルに逢う危険性は孕んでいるということは理解しておきましょう。

 

【まとめ】

 

いかがでしたでしょうか?

会社側が「作らないといけない!」と焦燥感に駆られてとりあえず作成された就業規則、そこには大きな落とし穴があるかもしれません。

 

当然ながらリスクが顕在化しない可能性もありますが、潜在的なリスクを抱えたままで伸び伸びとした会社経営ができるでしょうか?

そんな会社に従業員は我先にと着いてきてくれるでしょうか?

 

従業員は何の不満も無く働いてくれるロボットではありません。

社長と同じ人間です。

そして、生きてきた環境も、物事への考え方等も11人異なります。

就業規則を見た従業員はそれぞれ異なった、自分に都合の良い解釈の仕方をするかもしれません。

 

何らかのキッカケで一度顕在化してしまった労務リスクは社内に伝播し、「もしかして私も当て嵌るんじゃ…?」と次々に延焼する可能性も考えられます。

 

一度作成された就業規則の内容を従業員側の不利益に変更することは容易なことではありません。

だからこそ、自社が就業規則を作ろうと決意した際は必ず専門家に相談するようにしましょう。

勿論、既にモデル就業規則や就業規則のテンプレートをそのまま流用してしまった場合でもまだ遅くはありません。

 

弊所では会社の労務リスクが顕在化して余計なお悩みが増えることを避けるべく、就業規則の作成、および全面的な改定の必要が生じた場合でも徹底してサポートさせていただいております。

 

中小企業の就業規則をしっかり整備して会社の現在から未来まで守り通したい、土台固めをしておきたい方はお気軽に長崎県佐世保市の社労士事務所、楠本人事労務研究所にお問合せください!


楠本人事労務研究所 代表社会保険労務士 楠本一紀

社会保険労務士

代表社会保険労務士 楠本一紀

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