介護業界の就業規則についてのブログ記事のアイキャッチ


就業規則は業種別に実態に即した内容や規定が重要です!今回は介護業の例をご紹介します



こんにちは!長崎県佐世保市の採用特化社労士事務所、楠本人事労務研究所です。

 

皆様の会社には就業規則が備え付けてありますか?

それは、会社の現在の状況や業種とマッチした最新のものになっていますか?

就業規則は「ただ作成するだけ」では自社の状況とマッチしたものにはならないだけではなく、自分で自分の首を絞めることになってしまいます。

 

そこで、今回は【介護業界】で使える就業規則の条文の例をご紹介いたします。

介護業界に近い経営者様は是非最後までご覧になられたうえで、自社の就業規則がどのようになっているか見直してみてください。

 

【職種に関する規定】

職種

多くの就業規則は、自社の職種はどのようなものがあるか、ということをわざわざ規定することはありません。

というのも、多くの場合は雇用形態である「正社員、契約社員、パート、嘱託社員」を明確に定義すればそれで足るからです。

 

しかし、こと介護業界においては必ずしもそうとは言い切れない場合があります。

介護業界には、賃上げを推進するべく国から補助される手当があるからです。

これを、処遇改善加算手当と言います。

 

これがあることから、従業員を雇用形態だけではなく、その職種によっても明確に定義しておくと従業員それぞれが自身の配置された職種が何であるか、非常にわかりやすいのではないでしょうか。

以下に、職種の一例を記載しますので、是非参考にしてみてください。

 

第○条 人事

1.職種は次のとおりとする。

(1)施設長

(2)事務長

(3)介護職員

(4)ケアマネージャー

(5)事務員

(6)生活相談員

(7)理学療法士

(8)作業療法士

(9)言語聴覚士

 

【人事異動に関する規定】

人事異動

人事異動、とりわけ昇格や降格に関して介護業界は非常に重要な部分になります。

これは、前述の処遇改善加算の加算等級上、正しく従業員のキャリアパスを作成し、それを運用する必要があるためです。

 

そして、このキャリアパス制度は全ての介護事業所が共通の評価制度を使用するわけではありません。

各事業所の規模や形態は勿論、その事業所の理念や目指す方向性、自社が望む人物像に応じて形成するものであるため、1,000社の介護事業所があれば1,000通りのキャリアパス制度が存在します。

 

そのいずれも、従業員のスキルや資格、経験等を事業所内で適正に評価したうえで給与面や労働環境面に反映し処遇することが重要になります。

これからの未来で従業員11人が自身の目標や会社との方向性、価値観を同じくして、やりがいを持って働くことができる業界に変えていき、介護従事者を増やしていくことがキャリアパス制度の導入や普及の狙いの1つにあるでしょう。

そのうえで、人事異動に関して明確な定めを行うことはキャリアパス制度の健全な運用上、非常に重要なものになりますので、以下の例を参考にしてみてください。

 

第○条 昇格(キャリアパスおよび人事評価等に基づく場合)

1.法人は、キャリアパスに基づく従業員の成長を促すべく、定期的(○か月毎)に職位の昇格を検討する。

2.昇格候補とする職員の要件は次の各号の通りとする。

(1)人事評価:直近○年間の人事考課の評価結果が○表評価以上

(2)上司推薦:直属の上司の推薦があること

(3)経験年数:昇格後の職位に必要な現職員の経験年数を満たしていること

(4)保有資格:昇格後の職位に必要とされる資格がある場合は、当該資格を取得していること

3.前項に定める要件を満たす従業員について、以下の各号に定める審査を行ったうえで昇格させることがある。

(1)実技試験

(2)面接試験

(3)その他、法人が定める試験

4.前項の試験の結果、昇格させることが適切と法人が判断した場合、当該従業員について昇格させる。

5.従業員は正当な理由がない限り、昇格の命令に従わなければならない。

 

第○条 昇格(資格に基づく場合)

1.法人は、従業員が介護福祉士等キャリアパスに定められた資格を取得した場合、その資格に応じて職位を昇格させることがある。

2.従業員が、キャリアパスに定められた資格を取得した場合、速やかに資格証明書を提出し、昇格の審査を受けるものとする。

3.法人は、従業員の資格取得後、業務内容および役割を再評価し、適切な職位への昇格を行う。

4.昇格の決定は、資格の適用範囲、資格の要件、および法人の職務基準に基づき行われる。

 

【職位変更時に行う支援の規定】

昇格

職位変更に伴って、従業員はこれまでとは大きく異なった業務に従事することがあります。

その際に法人からのバックアップが十分でなかった場合、どうなるでしょうか。

 

給料が上がったことは嬉しい反面、既存の業務と新しい業務とのギャップや大きくなった責任の重圧に耐えられなくなってしまい、昇格したにも関わらず退職してしまう、もしくは自ら降格を申し入れることがあるかもしれません。

 

そのようなことにならないよう、しっかり就業規則に支援について規定しておくと共に、形骸化しないよう十分に実施しておくことが重要です。

職位の変更に関する支援については、以下の例を参考にしてみてください。

 

第○条 職位変更に伴う支援

1.法人は、職位変更に伴う従業員の適応支援を行うため、必要に応じて研修や教育プログラムを提供するものとする。

2.降格を命じられた従業員に対しては、メンタリングやカウンセリングの機会を提供し、職場環境への適応を支援する。

 

【介護事業所の労働時間に関する規定】

労働時間

基本的に、我々のような社会保険労務士事務所は従業員全てが一律の始業時刻、終業時刻で勤務する例がほとんどです。

しかし、介護事業所においてはそうでない場合の方がほとんどでしょう。

主に早番や遅番に加えて、夜勤がある事業所も多いのではないでしょうか。

 

それだけではなく、更に日勤や準夜勤等が加わる場合があったり、変形労働時間制を導入している事業所があったりと、その勤務パターンは事業所によって様々ですが、全てに共通することとして、【全てのシフトパターンを正しく記載すること】にあります。

労働時間の例について記載すると共に、変形労働時間制を導入した企業が、その適用を無効にされた事例を紹介いたします。

 

第○条 労働時間と休憩(変形労働時間制)

1.1か月単位の変形労働時間制が適用される従業員の労働時間は、第○条の規定にかかわらず、毎月○日を起算日とし、1か月を平均して1週間あたり40時間以内とする。

2.各日の労働時間、始業・終業時刻および休憩時間は次のいずれかとする。

早番: ○時~○時 休憩:○時間

日勤: ○時~○時 休憩:○時間

遅番: ○時~○時 休憩:○時間

準夜勤:○時~○時 休憩:○時間

夜勤: ○時~○時 休憩:○時間

ただし、業務の都合その他やむを得ない事情により、事前に通知し、始業・終業時刻を繰上げ、又は繰下げることがある。

3.各従業員の日別の勤務シフトおよび休日の割振りは、変形期間の各起算日の1週間前までに勤務シフト表に設定し通知する。

 

【変形労働時間制が無効にされた例】

 

介護業界の就業規則の例からは少々脱線しますが、変形労働時間制がその運用方法によって無効とされた判例をご紹介いたします。

 

・日本マクドナルド事件 名古屋地裁(令和41026日)判決

「概要」

日本マクドナルド元社員の男性が、成績不振の従業員に対する業績改善計画で達成困難な目標を課され退職を強要されたとして、同社に解雇無効や慰謝料などを求めた訴訟の控訴審判決が名古屋高裁であったものである。

同社が当該元社員に適用していた「変形労働時間制」を無効と判断し、未払い賃金約61万円の支払いを命じた1審・名古屋地裁判決を支持。

一方で、「退職を強要された」とする元社員側の請求は棄却されたもの。

 

同社は各店舗で1か月単位での同制度を導入し、就業規則で規定していた。しかし、元社員は就業規則とは異なるシフトで勤務していた。これに対し、1審の判決では「就業規則に定めていない店舗独自の勤務シフトは労働基準法の要件を満たしていない」と変形労働時間制が無効と判断した。

 

同社は1審で、「全店舗に共通するシフトを設定することは不可能で、各店舗のシフトは就業規則に準じている」と主張したが、「労働基準法は労働者の生活設計を損なわない範囲で変形労働時間制を認めるものであり、使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更することは許容していない」と主張を退けた。

 

介護業界においても変形労働時間制を導入している事業所はあるかと思いますが、これは非常に影響の大きい判例のように感じられました。

先の例では18時間の5パターンがありましたが、原則これらのパターンのみ記載しておき、その他13時間や4時間のパターンが事業所毎に発生した場合は就業規則に規定せずその都度対応したうえで、変形労働時間制の適用により残業代は発生させないという運用が事実上不可能になります。

対策としては少々面倒ではあるものの、やはりシフトパターンを就業規則に全て記載し、可能な限りそれに従って運用するしかないかと考えられています。

 

【利用者の送迎に関する規定】

送迎

話題を戻しましょう。

介護業界の業務は施設のみには留まりません。

たとえ施設での業務が中心であったとしても、利用者の送迎といった、それに付随する業務が発生することがあります。

 

そして、送迎は自身や自社の従業員を乗せるのみならず、利用者も乗車することがあるため、その安全管理は正確に行われなければなりません。

例えば、アルコールチェックや車両の点検、スケジュールの遵守や安全確保等が挙げられます。

以下に規則の例を記載しますので、参考にして自社の就業規則を見直してみましょう。

 

第○条 送迎担当従業員の責務

1.送迎担当従業員は送迎業務に従事するにあたり、法人が定めたアルコールチェックを送迎業務の前に受検しなければならない。

2.送迎担当従業員は、出発前および帰社後に必ず車両の点検を行い、異常が無いことを確認するものとする。

3.車両に異常が発見された場合、直ちに○○に報告し、修理又は交換の手続を行わなければならない。

4.送迎担当従業員は事前に提示された送迎スケジュールを遵守しなければならない。やむを得ずスケジュールを変更する場合は直ちに○○に報告し承認を得なければならない。

5.送迎担当従業員は利用者の乗降時の安全を確保しなければならない。

 

【個人情報等の保護管理に関する規定】

個人情報

介護従事者や事務員をはじめとする介護業界の従業員は、人を相手にする仕事柄、個人情報を知る機会や取り扱う機会が非常に多く存在します。

これらの情報に関しては十分に注意を払って管理しなければならず、第三者に対して情報漏洩に繋がってしまうリスクがあることから、就業規則内の他の規定とは異なり、退職後も続けて義務を課されることもしばしばあります。

 

そして、これは日常業務内で周知を続けることは勿論のこと、就業規則でも正しく規定されておかなければならず、違反につき懲戒に処する場合があることも明記しておくと良いでしょう。

以下の例から、自社の規定を見直すと共に、現在の実務上個人情報漏洩のリスクが無いか確認してみましょう。

 

第○条 個人情報等の保護管理

1.従業員は、法人および利用者等に関する情報の管理に十分注意を払うと共に、自らの業務に関係のない情報を不当に取得してはならない。

2.従業員は、事業所または職種の移動もしくは退職に際して、自らが管理していた法人および利用者に関するデータ、情報書類等を速やかに返却しなければならない。

3.従業員は、法人が保有しまたは従業員が業務遂行上知り得た個人情報を、業務に必要な範囲を超えて利用してはならず、また法人の業務として適正な手続を踏む場合を除き、第三者に開示、漏洩してはならない。従業員は、退職後も本項の義務を守らなければならない。

4.従業員は、法人の業務遂行上個人情報を取扱う場合、自らが権限を有する個人情報のみを取扱い、これを適切に管理し、権限を有しない他の従業員に個人情報を取扱わせてはならないものとする。

 

【まとめ】

 

いかがだったでしょうか?

自社の就業規則を比較した際に、参考になる例はあったでしょうか。

今回記載した例は全体のほんの一部でしかなく、実際の就業規則作成時は更に深くヒアリングして自社の状況を反映することが求められます。

 

また、他の記事でもまとめていますが、就業規則のテンプレートはあくまで1つの草案であり、「条文ってこんな書き方で作ればいいんだな」くらいの感覚のものと思っていただく方が適切です。

 ⇒【注意!無料の就業規則テンプレートをそのまま使用していませんか?危険性を専門家が解説!】

 

就業規則のテンプレートにしても、今回の記事でまとめさせていただいた例にしても、1つの草案と割り切り、自社の状況が正しく反映された、「自分で自分の首を絞めない」就業規則を作成することが最も重要であることは覚えておきましょう。

 

就業規則に関して、更に深く知りたい、自社の状況にあった就業規則を検討したいとお考えの方はお気軽に長崎県佐世保市の社労士事務所、楠本人事労務研究所にお問合せください!

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