他店舗ヘルプ!社員の宣伝への対応!美容業の就業規則はどのように作成すれば良いのか?
こんにちは!長崎県佐世保市の採用特化社労士事務所、楠本人事労務研究所です。
皆様の会社には就業規則は備え付けてありますか?
それは、会社の状況や業種とマッチした最新のものになっていますか?
就業規則は「ただ作成するだけ」では自社の状況とマッチしたものにはならないだけではなく、自分で自分の首を絞めることになってしまいます。
今回は【美容業界】で使える就業規則の条文の例をご紹介いたします。
美容業界と言いますと、他の業種ではなかなか見られない、他店舗へのヘルプや従業員自身が自らのSNSで店舗の広報を行い、集客を行っている等の動きが見られます。
ネイルやマツエク、マツパ、美容師といった美容業界に近い経営者様は是非最後までご覧になられたうえで、自社の就業規則がどのようになっているか見直してみてください。
【等級に関する規定】
就業規則の多くは、「正社員、契約社員、パート、アルバイト、嘱託社員」のような雇用形態が定義されているものの、その雇用形態の中にどのような等級の従業員が居るのか、明確に定義されていることはあまり多くありません。
一例を挙げますと、部長や課長、係長等がそれに当てはまります。
勿論、就業規則ではなく人事評価の規定を作成して、そちらに反映させるのも良いでしょう。
実際に美容業で等級に関する規定を作成しようとした場合はどのようになるでしょうか。
名称や取り扱う業務は様々なものが考えられますが、今回は美容師を例に挙げてみましょう。
第○条 等級
1.正社員の等級区分は、次のとおりとする。
(1) アシスタント:スタイリストの補助業務に従事するもの。
(2) スタイリスト:主として、カットやパーマ、カラー等の施術を行うもの。
(3) トップスタイリスト:スタイリストとしての経験を有し、特定の技能に優れていると認められるもの。
(4) マネージャー:店舗管理者、店長としての職責を担うもの。
この他、会社の状況に合わせて昇進の時期やスタイリスト、トップスタイリストに準ずる等級への昇進条件等も明示しておくと更にわかりやすいでしょう。
【他店舗勤務(ヘルプ)に関する注意点】
美容師に限らず、ネイルやマツエク、マツパ等、美容業界全体で起こり得ることですが、多店舗展開している場合、A店舗で働く従業員が予約の入り方によってはB店舗に応援(ヘルプ)に行くことが考えられます。
その場合、いくつか考慮しなければならない点があります。
【移動にかかる費用負担】
地域や従業員によって、通勤に使う手段はそれぞれ異なります。
ある人は車、ある人は原付バイク、公共交通機関、徒歩等、多岐に渡るでしょう。
この場合において、A店舗で勤務していた従業員がB店舗にヘルプに行く場合、B店舗への通勤手段がどのようなものか考えなければなりません。
A店舗では徒歩で通勤していたものがB店舗には公共交通機関で通勤する、ということも容易に想像できるでしょう。
ヘルプに行った従業員に対して、通勤手当を別途支給するのか、それはどのような考え方で支給するのかを記載すると、普段勤務する店舗での通勤手当との差が明確になります。
【賃金水準の差】
ヘルプに行く場合、移動の手段や経路が変わるだけではなく、店舗によって賃金水準が異なる場合もあります。
その際には、高い方の賃金単価で計算することが一般的です。
店舗の単価に沿う場合もありますが、わざわざ現在の店舗と比較して遠方であろうヘルプに入ったにもかかわらず、単価が低く計算されてしまうと従業員としても気持ちの良いものでは無いでしょう。
【他店舗勤務(ヘルプ)に関する規定】
上記の内容を踏まえて、他店舗勤務にあたってはヘルプ先の賃金状況を加味したうえでどのような計算を行うのか、移動に伴う費用や移動時間はどのように扱うのか。
これらの内容が明らかになるような規定を作成しましょう。
具体的には、以下の内容が一例として考えられます。
第〇条 他店舗勤務
1.会社は、従業員に対して、他店舗への勤務を命ずることがある。従業員は正当な理由がある場合を除き、これを拒むことができない。
2.前項の規定により、他店舗で勤務する場合、自宅から店舗までの通勤に要する費用は通勤手当として支給する。また、1日に複数の店舗にて勤務をする場合において、店舗から別の店舗への異動に伴う費用は、経費として精算する。なお、店舗から別の店舗への移動が業務時間中に行われるときは、会社が認める範囲で労働したものとして扱い、賃金を支払う。
3.他店舗との賃金水準に差がある場合は、高い方の賃金単価で計算して支給する。
4.他店舗勤務を行う従業員は、自店舗以外の他店舗での労働時間を自店舗の労務責任者へ報告を行うこと。
【服務に関する規定】
服務規律は、いわゆる会社内のルールのようなものです。
多くの会社では社内の備品持ち出しは禁止されておりますが、それは美容業全般でも例外ではありません。
美容室ではカラーやパーマに使う薬品やハサミをはじめ、ネイルではチップや器具、ジェル等、業界毎にそれぞれ異なる備品があり、それは原則個人利用するものではないでしょう。
一方、全ての場合において持ち出しを禁ずると業務上の必要性(展示会や出張施術等)がある場合に対応できなくなってしまうため、例外規定は必須です。
また、身だしなみについても他の業界と比較すると衣服や髪型、髪色、ネイル等は比較的自由度は高いものの、前提として「施術への影響」と「お客様からの不快感」が無いことが挙げられるでしょう。
加えて、例えば美容室の場合はお客様にカラーやパーマを施す場合、薬品やお客様の状態によってはアレルギー反応等を引き起こしてしまうことも考えられます。
このようなことも考慮したうえで、必ず以下のように社内ルールとして明示しておくようにしましょう。
第〇条 服務
1.スタイリスト(その他、ネイリスト等)は、自身のスキルおよび業務能力の向上に努めるものとする。
2.会社内で用いる薬品や備品は、原則としてその他の場所への持ち出しを禁ずる。ただし、会社の許可を得た場合はこの限りではない。
3.身だしなみ(衣服、髪型等)は、常に清潔を保ち、他人に不快感を与えないものとし、職場の雰囲気に合う服装を心がけること。
4.髪色やネイルは自由とする。ただし、施術時に影響が出ない程度やお客様の不快にならない範囲内としなければならない。
5.お客様にカラーやパーマ等の施術を施す際は、被施術者の頭皮の状態やアレルギー等を確認の上施術を施さなければならない。
【競業避止義務の規定】
競業避止義務と聞きますと、辞めてから一定期間は同業種で働いたらいけない規定のことを想像されるかと思います。
就業規則において競業禁止を定めることは競業を禁止するだけの合理的な理由があることが前提になりますが、不正な競業の抑止やノウハウの過度な流出を抑止する効果があるため有用です。
一方で、労働者の職業選択の自由もあることから、内容には大幅な制約がかかることには注意しなければなりません。
この前提のもとでの有効性の判断は、使用者側の利益、労働者側の地位、役職、職務内容、地域の限定の有無、制限期間、禁止行為の範囲、代償措置の有無等が総合的に考慮されます。
このことから、就業規則において競業避止義務の特約を定めることは必須とはいえ、たとえ定めたとしても、それに基づいて使用者側が対応を行う際は、なお慎重な判断を要します。
実際の運用においては、一例として以下のように就業規則に規定したうえで、競業禁止に関する誓約書として取り交わすことが一般的でしょう。
第〇条 競業避止義務
1.従業員は、在職中に同一または類似の業種の事業を行うこと及び、同事業を行う従業員になることはできない。
2.従業員は、退職後6か月、会社が存する同一市区町村内において同一または類似の業種の事業を行うこと、および、同事業を行う個人または法人の出資者、株主、従業員、取締役または顧問等になる等の競業行為を行ってはならない。
3.前各号については、会社が書面により承認した場合はこの限りではない。
(誓約書の例)
第〇条 私は、本誓約書の趣旨に則り、貴社退職後〇か月にわたり同一市区町村内の範囲において貴社の許可を得ることなく、次の行為を行わないことを約束いたします。
1.貴社の従業員に対し、貴社と競業関係に立つ事業への就職などを勧誘すること。
2.貴社と競業関係に立つ事業を自ら開業し、または設立すること。
3.貴社と競業関係に立つ事業またはその提携先企業に就職し、または役員に就任すること。
【SNSでの宣伝に関する規定】
多くの会社の就業規則では従業員のソーシャルメディアの利用に対して、幾つかのルールを設けており、代表的なものが、業務上知り得た情報の発信や会社の信用を損なう情報を発信しないこと等が挙げられます。
また、原則業務中のSNSの利用を認めておらず、加えて、業務で使用するパソコンやタブレット端末、スマートフォン等の利用についても制限を設けたり、会社の閲覧を義務付けていたりすることもしばしばあるでしょう。
美容業の場合、多くの場合で従業員のSNSを宣伝目的として積極的に利用させることがあります。
この場合でも従業員に何ら制限を付けることなく発信を行わせることは会社の信用を損なう危険性があるため、その他の業種と同様に留意しなければなりませんが、それに加えて顧客へのなりすましや肖像権への留意等、お客様に直接施術を行う業種ならではのルールが存在します。
第〇条 SNSでの宣伝
1.会社の宣伝をSNS等で行う場合には、以下の各号に定める事項に注意して宣伝を行うこととする。
(1)口コミ等の投稿を行う場合は、第三者が利益を受けていることを前提に、会社の宣伝や広告を行わないこと。また、従業員が顧客になりすました投稿は行わないこと。
(2)カット動画やスタイリング動画等を撮影し投稿する際は、肖像権に留意して顧客の許可を得た上で行うこと。
(3)情報発信は、会社指定の時間・場所・端末から行い、その他の情報発信機器からの投稿やアクセスを行わないこと。
(4)その他、会社のイメージを損なう投稿や事実と反する投稿は行わないこと。
【リファラル採用に関する手当の規定】
美容師をはじめ、マツエク等業務に従事するために特定の資格を有していることが要件になることも少なくありません。
そうした場合、特定の資格を有しない事業と比較すると人材の確保が格段に難しくなり、採用と定着の両面に課題が生まれます。
その採用の面を少しでも解消するために「リファラル採用手当」のような形で、紹介を行った従業員と紹介された従業員に対して、紹介された従業員が一定期間就業を継続した場合に特別な給与が支払われる場合があります。
私は常日頃から「福利厚生や給与で人を集めようとする場合、福利厚生で集まって福利厚生で去るからあまり得策ではない」と顧問先にも話していますが、リファラル採用や、就業に対して特定の資格を要する場面では少々事情が異なります。
特定の資格を有する場合では「そうでもしないと本当に人が居ないし来ない」という側面もありますが、リファラル採用においては「友人の〇〇が良い職場と言うなら」のような「友人や知り合い」が職場の人間関係をある程度担保する環境にあるため、定着に繋がりやすいということもあり、特に地方において美容業の業種だけでなくリファラル採用は積極的に採用されている手段です(手当が出るかは会社によります)。
第〇条 リファラル採用
1.リファラル採用とは、会社の採用募集要項に該当すると見込まれる人材を会社に紹介し、その人材が採用に至った場合に、人材1名につき、紹介した従業員と被紹介者の双方にリファラル採用手当を支給する制度である。
2.リファラル採用手当の支給は、被紹介者の入社日から1年を経過した日以降も就業している場合に全額を支給するものとし、1年以内に退職した場合は、理由の如何を問わず支給しない。
3.リファラル採用手当は、原則として以下の区分によるものとする。
紹介者 :〇〇円
被紹介者:〇〇円
【まとめ】
いかがだったでしょうか?
自社の就業規則を比較した際に、参考になる部分はあったでしょうか。
今回記載した例や手当はあくまで一例であり、実際の就業規則作成時は会社特有の慣例等も含めて細かくヒアリングを行い、自社の状況を反映して作成することになります。
また、本記事の導入で記載している内容であり、他の記事でもまとめていることですが、就業規則のテンプレートや今回の規定例もあくまで1つの草案でしかなく、「条文ってこんな書き方なんだ」程度の感覚を抱かれる方が適切なものです。
⇒【注意!無料の就業規則テンプレートをそのまま使用していませんか?危険性を専門家が解説!】
就業規則のテンプレートにしても、本記事の例にしても、1つの草案、叩き台と割り切り、自社の状況や慣例、義務の履行限度が反映された「自分で自分の首を絞めない」就業規則の作成が最重要事項であることは忘れないようにしましょう。
就業規則に関して、更に深く知りたい、自社の状況にあった就業規則を検討したいとお考えの方はお気軽に長崎県佐世保市の社労士事務所、楠本人事労務研究所にお問合せください!
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